会長挨拶

第23回日本CT検診学会学術集会大会長 大松 広伸 第23回日本CT検診学会学術集会大会長
国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院
呼吸器内科 / 臨床情報科長 大松 広伸

平成28年2月12日(金)と13日(土)の両日、千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」において、第23回日本CT検診学会学術集会を開催させていただくこととなりました。大変光栄に思うのと同時に、このような機会を与えて頂き、会員・学会関係の皆さまに厚く御礼申し上げます。

1993年に、東京都予防医学協会「東京から肺がんをなくす会」において世界ではじめて経年的な低線量肺がんCT検診が開始されました。本学会の前身である「胸部CT検診研究会」が発足したのはその翌年であり、既に20年以上を経過しました。開始当初は、次々と発見される微小な肺病変と、切除すれば病理学的に癌であるとの結果に皆驚愕したものです。しかしながら、シングルディテクターのヘリカルCTがようやく実用化された時期であり、画質も十分満足できるものではなかったため、そんなに簡単ではありませんでした。同じ肺がん診療に携わる同僚からは、大幅に読影労力が増加する(1枚の単純写真→約30コマのCT画像読影)ので、検診として成り立つのかなどと批判もされました。モニタでなくフィルムをシャーカステンに掛けて読影する時代であったからかもしれません。この検査の目的はあくまで存在診断であって質的診断ではない、結節を発見したら質的診断のために改めてthin-section CTを撮るべきであるなどと、自身で発表しておりました。自分の読影技術が不足しているがゆえ、画質が悪いことを言い訳にしていたのかもしれません。ところが技術の進歩は目覚ましく、マルチディテクターCTの登場によって、撮影速度はムーアの法則を超える勢いで4倍、16倍、64倍と増していき、体軸方向の空間分解能と時間分解能が飛躍的に改善しました。更に昨今の新しい再構成技術により、超低線量でありながら、再撮影すること無くはじめからthin-sectionでの撮影・再構成が可能となっています。

米国で行われた、胸部X線検診 vs 低線量CT検診の無作為化比較試験National Lung Screening Trial (NLST)により、X線検診に比しCT検診が肺癌死亡を約20%減少するという報告から5年が経ちました。米国においては、この結果に基づいて公的保険の適応になったとも聞いております。我が国においても益々CT検診の重要性が高まってくると思われますが、本学会こそが、CT検診技術のスキルアップを図り、精度の高い検診を国民に提供し、ひいては国民の肺がん死亡を減少せしめる先頭にたつべきであろうと思います。過去数年間の大会では、NLSTの報告もあって、検診の有効性評価や方法論など大局的なテーマでしたので、今回の学術集会のテーマは、あえてCT検診を開始した頃の最も重要な原点に帰るという意味で「CT検診技術のスキルアップ -存在診断と質的診断の両者を極めるために-」としました。どんなに撮影装置が進歩しても、また、CAD(Computer-aided Diagnosis)の性能が上がったとしても、より早期にがんの候補を拾い上げ(存在診断)、より早期に良悪の鑑別が出来るか(質的診断)は、撮影や読影に携わる医師や技師のスキル次第です。検診プロセス内の最も重要なポイントであり、また永遠の課題でもあろうかと思います。検診団体のまとまった成績のご発表のみならず、教育的な症例、教訓的な症例、興味ある症例などの提示も大歓迎ですので、多数演題登録していただければ幸いです。

この大会の会場は、先日開業10週年を迎えたつくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅に隣接した「柏の葉カンファレンスセンター」です。この地域は、スマートシティとして環境やエネルギーに配慮され整備された近未来的な都市空間で、秋葉原から30分の好立地でもあります。CT検診に携わる多くの方々にご参集いただき、日頃の研究成果をご発表頂けることを、楽しみにしております。